【四字熟語の処世術】罵詈雑言(ばりぞうごん)

 Date:2017年12月13日13時24分 
 Category:文学・語学 
 SubCategory:四字熟語の処世術 
 Area:指定なし 
 Writer:遠道重任


 スポーツジムでの話である。

 毎日ではないが、時間があれば行くようにしている。筋トレやプールで約2時間のエクセサイズ。体力・健康維持のためには必要な時間と割り切っている。家で歩くなりジョギングすれば良いのだが、怠け心には未だに勝てない。お金を払うことで「もったいない」という意識が原動力となる。一方、駐車場が使えるのも契約を継続している理由の一つだ。仕事上も重宝している。駐車場代とジム利用料でかなりの部分が相殺されている。

 話しを戻すが、いつものようにプール横のジャグジーで体をほぐしていたときのことだ。隣にやって来た70代の女性に声をかけられた。残念ながら目が悪いのでほとんど顔などは判別できないのだが、自分で70数歳と言っていたので間違いない。彼女との会話はこんな言葉から始まった。

 「あなた、あの女性をどうして知ってるの?」

 ジャクジーに入ろうとしたとき、知人の女性とすれ違い、ほんの少し言葉を交わしていたのをその女性は見ていたようだ。

 「知っていますよ。別のカルチャースクールでお会いしたことがあって…」

 そう答え終わるやいなや彼女に対する悪口雑言が始まった。

 「彼女はここに来るみんなから嫌われてるのよ。私はここに来始めた2年前からずっと彼女に嫌がらせを受けてたの。泳いでる時に手が当たったから、腫れ上がって痛みが退かないという言いがかりに始まって、ロッカールームでは聞こえよがしに悪口の連発。終いには浴室を出る私に向かって、出て行って清々したって声に出して言ったの。流石に堪忍袋の緒は切れたわ。みんなの前だったけど、言い返したの。負けないくらいの大きな声で。みんなビックリしてたけど彼女ほどではなかったわ。それからというもの、会えば私にすり寄って来るの。強がってるだけの人だったわ。周りにはよく言ってくれたって感謝されてる…」

 彼女の悪意に充ちたその言葉を伝える文章力を持ち合わせないのが残念だが、その時間がいかに長く無駄であったか…。本人は武勇伝気取りで話しているのだが、邪気に満ちた言葉を浴びせられる側は苦痛以外の何ものでもなかった。

 思うに、周りに感謝されてると彼女は言っていたが、周りの本音は、また一人嫌な女性が増えた…ではなかったろうか。少なくとも余り知りもしない人間に他人の悪口を言う人を人は信じる気にならない。むしろ問題児なのは彼女の方なのではと思ってしまった。

 罵詈雑言…きたない言葉で、悪口を並べ立ててののしることと辞書にある。悪口雑言といい罵詈雑言といい、ともに陰気に満ちた言葉の数々。厳に慎みたいと思う。