【街景寸考】81歳と77歳が再対決?

 Date:2024年03月05日13時40分 
 Category:エッセイ 
 SubCategory:街景寸考 
 Area:指定なし 
 Writer:大昭寺いさじ
 トランプ氏がアメリカ大統領選の共和党指名争いで独走状態にある。現段階では共和党内での争いだが、この報道を聞くたびに「なんでトランプが?」と不可解に思い、不愉快な気持ちになる。

 トランプ氏の大統領時代に行った政治センスについては門外漢のわたしに評価はできないが、ТV映像を通して見る限り大国のトップにふさわしい資質や人間性を具えているようにはとても思うことができないからだ。

 特にそう思うようになったのは、トランプ氏が3年前の大統領選挙でバイデン氏に敗退したとき、「不正選挙だ」「得票を盗まれた」と執拗に難癖をつけ続ける姿を見てからだ。以降、トランプ氏の傲慢な表情や口汚い話しぶりや、いかにも品性がなく教養に欠ける態度がやたらと目につくようになり、「こんな人間が大統領になっていいわけがない」という思いを持ち続けていた。

 ところが、今年11月に実施される大統領選挙を前にして、「もしトラ(もしトランプが再度大統領になったら)」という言葉が使われ、果ては「ほぼトラ(トランプ氏の当選はほぼ確実という下馬評)」の空気まで漂うようになってきたではないか。まさかここまでトランプ氏が再燃してくるとは思っていなかったわたしは、この辺りから「アメリカは大丈夫なのか」という疑念がもたげてくるようになった。

 この疑念はトランプ氏の存在によってのみ生じたものではない。プーチン大統領のウクライナ侵攻を非難しながら、ガザを攻撃するイスラエルを支援するという、このダブルスタンダード(二枚舌)を操るバイデン大統領を含めてのことである。

 今のまま大統領選を迎えれば、81歳の頼りないバイデン氏と77歳の傲慢で下劣なトランプ氏が再対決することになる。いかにも現在のアメリカの衰退ぶりを象徴するかのような対決であり、悪いギャグのように思える。「この大国アメリカに、賢明な思考力と実行力を具えた若い政治家はいないのか」と叫んでみたい。

 アメリカという国は、自由と民主主義、資本主義経済の最も進んだ豊かな大国であるという印象を持っていた。経済格差や人種差別など様々な社会不安を抱えてはいるが、それでも「腐っても鯛」という言葉があるように、この国の根幹を支えてきた自由と民主主義の理念は揺らぐようなことはないと思っていた。ところが、この思いに疑念が生じてきたのである。

 日本の政治家はどうか。国会中継を見る限り不誠実な答弁があまりにも多く、都合の悪い質問をはぐらかし、堂々と正面から議論をする政治家を見ることはない。あげくに公文書の書き換え、破棄により真実を隠し、派閥による「政治と金」問題など民主主義を形骸化し劣化を招く政治家を目の当たりに見ていると、「日本も大丈夫か」と思いたくなる。

 深夜討論番組「朝生テレビ」で、若い識者が「今の若者は政治家になりたいなんて誰も思ってない」と激しい口調で語っていたが、わたしは暴言だとは思えなかった。

 もっとも、未来ある子どもたちにとって良くない言葉ではある。