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【街景寸考】「ミャクミャク」のこと
Date:2024年06月03日12時59分
Category:
エッセイ
SubCategory:
街景寸考
Area:
指定なし
Writer:
大昭寺いさじ
大阪万博の開催は賛否が半々に分かれているようだ。半年前に実施した朝日新聞の世論調査でも「賛成」45%、「反対」46%だった。1970年開催の大阪万博のときと比べて、盛り上がりは思ったほど伝わってこない。
盛り上がりに欠けるのは、建築資材の高騰や深刻な人手不足、更には極端な短い工期等の問題で会場建設費が当初予算の2倍近くに膨れ上がったということがあり、こうした状況が影響しているのか自前で建設するパビリオンが60か国から40か国程度に減少しているということも背景にある。
加えて、私企業として投資すべきカジノ・総合型リゾート(IR)の周辺インフラを、大阪万博の開催に便乗して公金を利用しようとする下心が当局側にあるのではないかという指摘も一因に挙げられよう。
ましてや、能登地震の災害により未だ多くの被災者が避難生活や生活苦を強いられている中で、「なぜいま万博なのか」と疑問視する声があるのは当然だ。更に、先の東京五輪で発覚した汚職事件のように、万博においても事業運営のどさくさで甘い汁を吸う輩がいるのではないかという思いもある。
元々この万博の計画が浮上していた10年ほど前、「ネットの普及によりハードよりもソフト、エコが重要視される社会なので、ハコモノの祭典は時代錯誤だ」という意見が有識者等から指摘されていたようだ。団塊世代のわたしも、ハコモノ=土建国家=かつての高度経済成長期と連想してしまうので、情報技術に疎いわたしでもこの意見に同調できる。
ともあれ、このように多くの問題や疑問を抱える万博を、手放しで賛成できない層が半分近くいても不思議はない。ましてや、出不精を自認するわたしなんかは、イベントの類にわざわざ出かけて行くことはほとんどなく、大勢の観客でごった返す万博会場を想像しただけで尻込みしてしまう。
ケチをつけることがもう一つある。大阪万博の公式キャラクター「ミャクミャク」のことだ。趣味趣向のことなので恐縮だが、このキャラクターのデザインには失望している。掴みどころがなく、一体何を象徴しているのか皆目分からない。一般にキャラクターは可愛らしさを売りにしているが、それもまったく感じられない。
「ミャクミャク」は「脈々」からきているらしいが、それらしき意味がデザインから伝わってこない。数珠のように繋がったデザインで「脈々」を表現しているのかもしれないが、とても世界の国々との科学文明や文化の繋がりを連想することはできない。数珠玉に描かれている5つの目玉は、見ようによっては気味の悪い妖怪にしか見えない。
今回の大阪万博は、この「ミャクミャク」のように理念も意義も目的も実に分かりづらい。経産省は万博の経済効果を約2.9兆円としているが眉唾物であり、この皮算用を素直に聞き入れることはできない。正確に検証できないことを軽々しく言ってほしくはない。
大阪万博の話題を取り上げているТVを観るたびに、気分が重くなってしまう。