【四字熟語の処世術】南船北馬

 Date:2014年02月18日09時56分 
 Category:文学・語学 
 SubCategory:四字熟語の処世術 
 Area:指定なし 
 Writer:遠道重任
 久しぶりに筆を取らせていただいた。見ると昨年の4月に書いて以来だから10ヶ月ぶりの投稿である。大昭寺さんや米田さん、三陽さんのエッセイを楽しみに読ませていただいてはいるのだが、あまりに多忙を極めて書けないでいた。

 先日も三陽さんのエッセーで今年の干支「甲午」に因んで「南船北馬」「馬耳東風」の四字熟語が踊っていたのを見て、ちょうど一年前に書いた「竜頭蛇尾」を思い出し、一文を認めることにした。

 天干地支、つまり十干十二支の組み合わせは60年周期で一巡し、それを還暦ということは先に書いたとおりだが、今年の干支(えと)の甲(きのえ)は植物の発芽を意味していて、物事の始まりである。午(うま)は正午ということでもわかるように太陽が一番上に登った時を指し、季節でいえば真夏、つまり火のエネルギーを指している。一方で「忤」に通じ、逆らう、違反する、もとる、従わない、食い違う、乱れる、などの意味合いもあると言われる。我流で解釈すれば火の性を持つ「午」の上に木の性を持つ「甲」があるのだから、燃え盛って危なっかしい年になるのではと気を揉んでいる。

 さて、話は「南船北馬」に戻さなければならない。中国で生まれた言葉だけに当時の中国の交通事情をうまく言い表した言葉である。つまり、中国北方は山が多いため交通には馬を用い、南方は海が多く船を用いた訳で、全国を絶えず忙しく旅行することの意として用いられている。同様の意味で「東奔西走」があり、どちらかといえばこちらが多用されているように思うが、いずれも仕事などで国内国外を忙しなく飛び回るビジネスマンが思い浮かぶ。

 新たな年が明けてすでに1ヶ月半が過ぎようとしているが、このところの中国、韓国政府による反日政策は度が過ぎている感を受ける。民衆レベルにまでこの反日の機運が煽られてしまうと、今後の関係がどうなっていくのだろうかと一般庶民の私までもが心配したくなる。おそらく、政府高官レベルではこの難局を打開すべく、正に南船北馬、東奔西走して、緊張緩和へ向けた努力が続けられているのだと信じたいが、120年前の同じ「甲午」の年に朝鮮の農民らによる東学党の乱が起こり、それが契機となって大国清(現中国)との戦争、いわゆる日清戦争へと繋がって行ったことを考えると、歴史が繰り返されないことを祈るばかりである。