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【四字熟語の処世術】誠心誠意
Date:2015年08月05日10時14分
Category:
文学・語学
SubCategory:
四字熟語の処世術
Area:
指定なし
Writer:
遠道重任
今年の大河ドラマ「花燃ゆ」の視聴率が伸びずに苦しんでいると聞く。幕末、しかも吉田松陰の話と聞いて見始めたのだが、そんな風評を耳にした頃から、だんだんといつもの大河のように深みにはまることなく、日曜の夜を楽しみに待つほどではなくなっている。できれば松蔭に的を絞るか、松蔭亡き後の弟子らの活躍にスポットを当て描いてほしかったというのが本音だが、これから妹文(美和)がどのような生涯を送るのか、知らないだけに期待もしている。
吉田松陰といえば孔子や孟子の教えを松下村塾を開いて弟子たちと共に学んだことで知られる。幕末という国難に当たって、ただ国のため、ただ民のために至誠の限りを尽くして次の時代を開こうとした人であったようだ。ドラマの中でも、人に至誠があれば事は成る。成らぬのは未だ至誠が足りないためだと、自身を省み、苦しむ姿が描かれている。
人はよく誠心誠意という言葉を口にする。「意誠にして心誠なり」という事なのだろうが、果たして意を誠にし、心を誠にするとはどのような事なのだろうか。
先日、書店で「聖断」という本を見つけ買って読んでいる。半藤一利の終戦四部作の一つで、昭和天皇と日清、日露の戦争で弾雨をくぐった勇者、二・二六事件で四発の弾丸を受けた侍従長、そして終戦の大業を全うした首相として知られる鈴木貫太郎を軸に書かれた近代日本史でもある。
この書に描かれた元海軍大将鈴木貫太郎総理大臣の昭和天皇への忠義、忠誠は誰もが認めるところだったようで、天皇ご自身がそれを知り、自分の心を最も知る者として大きな信頼を寄せられていたという。そしてこの忠義一徹の鈴木総理が、日本国民を戦争の塗炭の苦しみから救い出した天皇のご決断、すなわち戦争終結の「聖断」へと導くキーパーソンになったのだそうだ。
誠の一字が国の運命を変える。国の運命とは人々の心の集合体である。すなわち、天皇の、そしてその忠臣らの誠が人々の心を動かし、終戦の扉を開き、混沌とした中に一条の光を見い出させたのだろう。
誠心誠意と軽く口にするが、誠の一字は重い。それ、私心を去るということか。振り返って、自分自身はただ誠の足らなさを痛感するばかりである。