【四字熟語の処世術】「和顔愛語」(わがんあいご)

 Date:2015年11月16日14時38分 
 Category:文学・語学 
 SubCategory:四字熟語の処世術 
 Area:指定なし 
 Writer:遠道重任


 和顔愛語…漢字が持つ意味の通り、柔和な顔をし、言葉は愛に満ちている、そんな人の姿を表した言葉だ。だから、この四文字を見るだけで誰とはなく柔和で優しい顔、笑みをたたえて心のこもった言葉をかけてくれる、そんな人の姿が眼に浮かぶ。

 元は仏教の経典にある言葉で、布施行の一つ。布施行とは仏道修行の一つで、喜んで相手の為になること。お金などの物的なものを喜捨することもあるが、精神的な部分で他の人に安らぎを与えることも布施行となる。もうひとつ言えば、喜捨とは喜んで捨てると書く。喜んでするのだから、見返りを求めたり、別に何かの目的があったり、もちろんいやいやだったりでは意味がない。お金を布施するにも喜んでするから布施行になる。お正月、三社参りに行くのはいいが、賽銭箱にお金を投げ入れて、それでもって神様や仏様にお願いを聞いてもらおうなどというのは布施行には程遠い。

 話が逸れてしまったが、だれもが和顔愛語をもって、人に接することができれば、それがたとえお金ではなくても、人々の心を潤し、安らぎを与え、その行いは伝染して周りの人々、さらにその周りの人々にも波及していくだろう。周りに暗く沈んだ人がいれば、こちらまで暗くなってしまうが、隣に明るい笑顔を振りまく人がいれば、こちらまで明るく、楽しくなってくるのは、だれもが経験済みだろう。思うに、和顔愛語は伝染するのだ。

 キリスト教のイエス様は「あなたがして欲しいと望むことを、人にしてあげなさい」と言われた。毎日、しかめっ面してあなたに愚痴ばかりこぼす人の側にいるのと、明るく笑顔で楽しい話をしてくれる人の側と、あなたはどちらの席に腰を下ろしたいだろうか。それは、いうまでもなく後者に決まっている。ならば、自分自身がまず、そういう人になる努力をすべきだ。人はポジティブでプラスのエネルギーを求めるものだ。ネガティブでマイナスのエネルギーを好むことはない。

 和顔愛語、それはまさに光り溢れるプラスのイメージだ。ポジティブなエネルギーしか感じられない。皆がこの言葉を大切にし、こういう人間になる努力をしたら、どれほど素晴らしい社会が生まれるだろうか。世界を変える力にだってなるに違いない。

 和顔愛語、だれだって気を付けていれば、少しづつでも実行可能なこの一歩を、まずは自分自身から始めたいと思う。