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【四字熟語の処世術】群集心理(ぐんしゅうしんり)
Date:2016年06月27日11時50分
Category:
文学・語学
SubCategory:
四字熟語の処世術
Area:
指定なし
Writer:
遠道重任
今は「舛添ロス」とでも言いたくなるような感じですね…テレビのコメンテーターがこう口にするほど、辞任でようやく収まった舛添都知事問題へのマスメディアの加熱な報道は凄まじかった。2ヶ月余りの間、これでもか、これでもかと息の根が止まるまで執拗に追い詰め、首を絞め続けるように見えた行為は、まるで集団リンチのようでもあった。誰も都知事の行為を良しとは思わなかっただろうが、一方で舛添たたきの有り様には疑問を抱く人もいたのではないだろうか。
群集心理という言葉がある。スポーツ観戦中のファンやサポーター同士の小競り合いが暴動に発展するなどは、この群集心理の表れだろうが、かつてのナチスドイツのホロコーストや戦争に突き進む国家の世論形成などにもこの群集心理が働いているように思う。
群集心理とは人が大勢いる時に起こる心理状態で、自分を見失い、集団の言葉や行動に調子を合わせてしまうこと、と辞書にある。マス媒体が発達したことで群集心理は実際に人が集まることで生まれるだけでなく、世論という声なき声、一人ひとりが持つ目に見えない「気」の集合によって醸成されるようになった。しかも、インターネット社会の到来でこれまで以上に速いスピードで隅々にまで広がっていく。FacebookやTwitterなどで一旦火がついてしまえば、もう誰も止めることができないほどの力となる。目に見えないネット空間に確実に存在する「気」のパワーだ。
群集心理という言葉を聞くと、今ではこのネット空間に突如現れるこの巨大な気の塊を連想する。暗い中で渦巻く黒い気の塊だ。人が持つ憎しみや恨み、嫉みなどのマイナスの気が塊となって増幅しているイメージだ。人はこのブラックホールのような気の塊に容易に飲み込まれてしまう。
民主主義の世の中では確かに多数の意見が尊重されるのだが、少数派の声も全く無視されるわけではない。心配なのは少数派が声を出せない状況が生まれてしまうことだ。群集心理が生まれやすい環境下では、この少数派の声すら飲み込まれて表に現れてこないような気がする。
辞書にあるとおり、群集心理に引きずられる人は、自分を見失っている。確固とした自分の意見を持っての行動ならば良いのだろうが、群集の多くは自分を失っているのだ。ネット社会だからこそ、なお一人ひとりが確りと自分の考えを持ち、自身を失うことのないように常日頃から心がけることが大切だと思う。舛添劇場は一方でこの課題を教えてくれたように思う。