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【四字熟語の処世術】七転八起(しちてんはっき)
Date:2016年11月15日09時15分
Category:
文学・語学
SubCategory:
四字熟語の処世術
Area:
指定なし
Writer:
遠道重任
もうすぐ一歳の誕生日を迎える孫が伝い歩きを覚えたのは一ヶ月ほど前のことだったように思う。毎日を孫と過ごしている割には、いつから這うようになり、伝い立ち、伝い歩きをするようになったか、正確には覚えていない。ただ、日に日に目が離せなくなっていくのが嬉しい反面、怖くもある。自我が生まれ、自己主張が激しくなってくる様は可愛くもあるが、行く末に一抹の不安を覚えたりもする。
彼女が興味あることにチャレンジする精神には頭が下がる。椅子に登ろうとする彼女を見つけては抱きかかえて場所を移動させるのだが、下ろせばすぐに這い這いして椅子に登り始める。何度も同じ事を繰り返すのだが、いっこうにやめる気配は無い。結局、こちらが根負けして注意しながら登らせるのだが、まるで起き上がり小法師(こぼし)のようなタフさだ。
七転八起(しちてんはっき)という四字熟語がある。七転び八起きだ。辞書には「何度失敗してもくじけず、立ち上がって努力すること。転じて、人生の浮き沈みの激しいことのたとえとして用いることもある。」とある。
孫娘を見ていてこの言葉を思い出した。ただひたすら自分の目標に向かって突き進む姿は、七転八起そのものだ。その繰り返しの中で、一日一日、自分の力で出来ることが増え、確実に成長を続けている。一度の失敗ですぐに気後れしてしまい、次の一歩が出なくなってしまう自分とは大きな違いだ。まさに負うた子に教えられて浅瀬を渡る思いだ。
七転び八起きといえば、真っ赤な達磨さんの置物を連想する。インドの高僧である達磨大師はお釈迦様から数えて28代目の祖師で、齢70歳にして中国に渡り禅宗を開いた祖として、また少林拳法のルーツとしても日本で有名だ。当時、熊耳山(ゆうじさん)の洞窟にこもり岩壁に向かって9年もの間、座禅されていたという話しは「面壁九年」という言葉で後生に伝えられている。転がしても転がしても元に戻る起き上がり小法師の達磨像は、坐業する大師の後ろ姿を模したものなのだろう。
達磨大師の伝記によれば、大師は釈迦伝来の心法を託す弟子を探すため、時の国主、梁(りょう)の武帝(ぶてい)に面会し帝の仏心を問うたり、時の高僧、慧可(えか)の心根を試したりと苦労を重ねられるが、なかなか大師の心を知る人は少なく、結果、先に書いた面壁九年の坐業を続け、待望の弟子の登場を待たれたのだという。
達磨大師の決して諦めない思い、継続する力、惜しまない努力があったからこそ、インドに生まれた禅仏教が中国において花を咲かせ、その心が日本で実を結び、今では世界に広がっている。
七転八起…孫娘に教えられた「不断の努力」と「諦めない心」を自分の座右とし、七転び八起きの達磨の精神を失うこと無く、前を向いて歩き続けなければと思う。