【四字熟語の処世術】「大器晩成」たいきばんせい

 Date:2017年01月05日13時01分 
 Category:文学・語学 
 SubCategory:四字熟語の処世術 
 Area:指定なし 
 Writer:遠道重任

 新年明けましておめでとうございます。本年も読者皆様方に取りまして実り多き一年となりますようお祈り申し上げます。

 さて、昨年は孫娘の「天真爛漫」(てんしんらんまん)な姿に汚れた我が身を省みて志新たに始まった一年でした。「歳寒松柏」(さいかんしょうはく)の教えにならい、その志を維持することに努めてはいましたが、果たして結果はどうだったのか…。自問するも、その答えを人生の途上で問うのは時期尚早のようです。

 今年は酉年です。酉は夜明けを告げる動物。混乱を極める世界にも「地平天成」(ちへいてんせい)の夜明けが近ければ良いと願うのですが、トランプ氏がアメリカ合衆国大統領に就任した後の世界が「五里霧中」(ごりむちゅう)を彷徨い、「暗中模索」(あんちゅうもさく)を繰り返す中、「群集心理」(ぐんしゅうしんり)に煽られ、行き詰まって「自暴自棄」(じぼうじき)に陥り、良からぬ方向へと流れていくのだけは避けたいものです。

 国内は安倍政権が野党を制して長期政権を睨んでいますが、トランプ氏の出方次第ではこれまでの密な関係に隙間が生じ、その機にロシア、中国が軍事力を背に強気の姿勢で押してくる可能性もあり、決して「前途洋洋」(ぜんとようよう)ではなさそうです。政治の世界は「面従腹背」(めんじゅうふくはい)の輩ばかりで、人間関係に信があるとは思えず、自らの「出処進退」(しゅっしょしんたい)さえ一人では決めることの出来ない集団のように見えます。衆議院選挙があるやに聞こえる今こそ、こうしたイメージを払拭してくれる政治家の登場に期待したいものです。

 昨年、「心機一転」(しんきいってん)して新たな事にチャレンジしようと決め、先ずは学びのために時間を割き、「韋編三絶」(いへんさんぜつ)とまではいかないまでも専門書を繰り返し読んでみましたが、還暦を迎えた今、昔のようにすんなりと頭に入るわけもなく、「猪突猛進」(ちょとつもうしん)できるほどのパワーもないのが実情です。しかし「七転発起」(しちてんほっき)する気力と「意気衝天」(いきしょうてん)の志まで失ってしまえば「百花繚乱」(ひゃっかりょうらん)の果を得ることは出来ません。「刹那主義」(せつなしゅぎ)的生き方ではなく、六十からでも先を見据えて今を生きる、「一石二鳥」(いっせきにちょう)などと安易な結果を求めず、一日一日を大切に生きることが重要なのだと、自分自身に言い聞かせています。加えて、年が年だけに健康にも留意し、「無病息災」(むびょうそくさい)ではなく、一病を以て息災と成す、そんな心構えで日々を送ることも大事です。

 今年の四字熟語は「大器晩成」(たいきばんせい)から始めさせて頂きます。花には早く咲くものもあれば遅咲きの花もあります。早成だからと誇らず、晩成を恥としない心の大切さを感じます。大器晩成は「大器の人ほど晩年になってその真の力を発揮する」と言う意味ですが、小器でしかない小生には早成も晩成もなく、ましてや大事を成すなど到底出来ることではありません。それでも今年は剣豪宮本武蔵にならい、「万理一空」(ばんりいっくう)を胸に弛まぬ努力だけは重ねて行きたいと思っています。