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【四字熟語の処世術】侃侃諤諤(かんかんがくがく)
Date:2017年05月18日09時45分
Category:
文学・語学
SubCategory:
四字熟語の処世術
Area:
指定なし
Writer:
遠道重任
ずいぶん昔の事だが40名ほどが集まった会議で、議場が荒れる時があった。議案が何だったかは忘れてしまったが、出席者の一人が「そんなに喧々諤々(けんけんがくがく)するのはやめて議事を進めてもらいたい」と冷静に、しかし声高に議長に意見した。その時の事だ。別の一人が立ち上がり詰問調で言ったのだ。「今の喧々諤々という表現はおかしい。喧々囂々(けんけんごうごう)が正しい。喧々諤々なんて言葉はない。言葉は正確に使ってもらわないと…」と。
議場はほんの少しの間だが静かになった。おそらく出席者の多くはその意味が分からなかったのだろう。可笑しなもので一様にポカンとしていた。「ここで言うことか…」と余りの空気の読めなさに愕然とはしたが、彼の性格を知っていただけに下を向いて笑いを堪えるのがやっとだった。
正義感が強く過ちに気づけば黙っていられない性格が、こんな所にまで顔を出そうとは…。こんな思いに駆られながらも、一方で自分自身違和感を感じなかった「喧々諤々」という言葉が気になった。
辞書を見ると「喧々囂々(けんけんごうごう)と侃々諤々(かんかんがくがく)とが混同されてできた語。大勢の人がくちぐちに意見を言って騒がしいさま。」とあった。誤用なのだろうが多くの人が使っているので辞書にも解説を載せたのだろう。
それでは喧々諤々の元となった喧々囂々と侃々諤々の意味は何か。前者は「大勢の人がやかましく騒ぎたてるさま。」、後者は「正しいと思うことを堂々と主張するさま。また、盛んに議論するさま。」と辞書にある。
まさに喧々諤々は両者の混同である。もしかしたら、彼はただ感情的に騒いでいるだけの議場を侃々諤々どころか喧々諤々にも値しない、つまりは単なる喧々囂々でしかないと、一刀のもと切り捨てたのかも知れない。
安倍昭恵総理夫人の言動が尾を引く森友学園問題。問題の本質から外れたところで続く与野党の攻防はただの喧騒でしかないようにしか見えない。国の行く末を決める国会は喧々囂々ではなく侃々諤々たる議論の場であって欲しい。国民の誰もがそう願っているはずだ。