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Date:2020年06月24日08時01分
Category:
エッセイ
SubCategory:
街景寸考
Area:
指定なし
Writer:
大昭寺いさじ
近年、経済の専門家らが「もはや日本は先進国ではない」と指摘する雑誌や書籍が目に留まるようになった。先進国としての基準や定義があるのかどうか知らないが、確かにIT関連やAI(人工知能)など科学技術の分野においては、欧米諸国だけでなく台湾や中国、インドなどにも後れをとっているらしいことは耳にしてきた。
それでも、G7(先進7カ国首脳会議)にいつも日本が名を連ねているということだけで、先進国の仲間であることを一度も疑ったことはなかった。
ところが、後れているのは科学技術だけでなく、自慢だった経済力においても同様であることを知るようになった。かつては世界第2位の経済大国を誇った日本だが、国民一人当たりのGDPは段々と順位を下げ、現在第26位である。このことを知ったときは愕然として息を呑んだくらいである。アラブ首長国連邦やイスラエルよりも下である。
貿易立国日本と言われてきた輸出も減少し続けていた。労働生産性の国際比較では、先進諸国の中では何と最下位にあることも知った。かつては世界を席巻した造船、鉄鋼、家電の各分野だったが、今は明らかにその勢を失っている。
更に落胆したことがあった。科学技術分野への研究費や教育費への公的投資が先進諸国より著しく低いということを知ったからである。この国の政府や資本家たちは目先の金儲けに右往左往するだけで、将来の日本を担う人材を育てることを真剣に考えていないのだと思えた。少なくとも、教育投資だけは先進国並みであってほしかった。
ここ10数年の間、日本は経済格差が著しく進み、中間層が減って貧困層が急増してきた。非正規社員の7人に1人は貧困にあえぎ、1人親世帯も増えてその半数以上が貧困に苦しんでいる。労働者の平均年収はすでに先進諸国の平均を下回り、賃金が右肩下りにあるのも日本だけというから驚く。
こうした日本の現状を理解するにつれ、もはや日本は先進国ではないという指摘を段々受入れことに抵抗がなくなってきた。というより、この国の将来は是が非でも先進国である必要はないのではないかとさえ思うようになってきた。むしろ小国でも精神的な豊かさに比重をおいた国づくりを目指してほしいと願うようになってきた。
2020年の世界幸福度ランキングを検索してみたら、首位はフィンランドで3年連続だった。2位がデンマーク、3位がスイス、4位がアイスランド、5位がノルウェーだ。スイスを除けば北欧の小国ばかりである。ちなみに日本は韓国の次で、62位だった。
中南米にコスタリカ(人口5百万弱)という小国がある。この国の首都サンホセでは、日常的に市民の間で「プラビーダ」という挨拶が交わされている。「素朴な人生を!」という意味で使われているようだ。「素朴な人生にこそ未来がある」という教訓めいた意味が含まれているそうだ。世界にはこんな素晴らしい挨拶をする国もある。