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【街景寸考】三権分立のこと
Date:2020年10月14日08時01分
Category:
エッセイ
SubCategory:
街景寸考
Area:
指定なし
Writer:
大昭寺いさじ
今、メディアは米国の大統領選の報道で賑々しい。わたしはと言えば、今ひとつこの賑々しさに乗ることができないでいる。ひいきにしたい候補者がいないからだ。トランプ氏は大統領としての資質も器量もないように思えるし、バイデン氏は77歳という高齢の弱々しい印象があるせいか強面のトランプ氏の前では頼りなげに見える。
願わくは、若くていかにも聡明で情熱溢れるかつてのケネディ大統領のような政治家に大統領候補として登場してもらいたかった。世界一の超大国にケネディ氏のような人材が一人もいないとは、とても思えない。政治には門外漢ではあるが、きっと何かの事情や背景があると思えて仕方ない。
それはともかく、今回の大統領選を巡る報道で素朴な疑問を持った。それは大統領が指名する連邦最高裁判事のことである。トランプ大統領は保守派の判事を選挙前に急いで指名し、これに対してバイデン氏は大統領になれば判事の枠を増やして連邦最高裁をリベラル派で過半にしたい思惑があることを知った。この辺のことが、わたしにはよく理解できない。
米国は日本と同様、三権分立(立法、司法、行政)を憲法で謳っているので、判事は政治的に中立・公正でなければならない。自分を指名した大統領寄りの考え方を司法の場で出すようなことがあってはならないはずだ。それなのになぜ保守派やリベラル派の判事がいたりするのか、理解できないでいる。米国ではきちんと三権が分立していないように思えてしまうのである。
今の日本の政治体制にも、これと似た疑問を持つようになった。日本も憲法で権力が偏らないよう三権分立制が敷かれてはいるが、前の安倍政権に続き今の菅政権でもそうだが、どうも行政(内閣)に権力が集中し過ぎているように思えてならない。
そう思うようになったのは、安倍政権のときに起こった森友学園や加計学園、「桜を見る会」の問題からである。政権中枢の問題が表面化するたびに、説明責任を果たさず、質問を逸らし、逃げ場を失いそうになると公文書の改ざん・破棄までするという遣り口を露骨に続けていた。法律を勝手に政権側に都合よく解釈変更した検察官の定年延長問題しかりである。
こうした遣り口からは、この日本で民主主義や三権分立制が正常に機能しているとは到底思うことはできない。さらに残念だったのは、国民も国会もメディアも、この「やりたい放題」を続けてきた安部政権を結局引きずり下ろすことができなかったことだ。この点においても、日本は正常に民主主義が機能している国だとは言えまい。
安倍政権を継承した菅政権はどうか。政権発足後に早速日本学術会議の任命拒否問題を巻き散らかしている。「やっぱりか」と思った。こうした遣り口は継承してもらいたくなかった。6人の学者を任命拒否した理由を明らかにしようとせず、いかにも官僚が用意した「総合的、俯瞰的」という訳のわからない言葉で論点をすり替えようと泡を食っている。情けなく、滑稽でさえある。
この任命拒否は、権力の意に沿わない考えを持つ学者を排除しているように思われても仕方ない。これを圧政と言わずして何と言おう。安部政権に続き、菅政権においても「内閣独裁」の政治体制が続くことを大変危惧している。