【街景寸考】共生以外に未来はない

 Date:2022年02月09日15時08分 
 Category:エッセイ 
 SubCategory:街景寸考 
 Area:指定なし 
 Writer:大昭寺いさじ
 新型コロナウィルスによるパンデミックが収まりそうにない。

 現在席巻している第6波のオミクロン株辺りで収束してほしいと思うが、ステレスオミクロンだの、デルタ株の変異種だのと、新顔が更に登場しつつあることが報道されている。これが第7波の兆候なのかどうか分からないが、実際にそうなれば、これまで我慢し続けてきた心が折れてしまいそうになる。

 急激な感染拡大により、医療関係者は過酷な医療業務を強いられ、感染者の中には入院できずに自宅で急死する例もある。更に、感染防止のために社会活動が制限され、多くの国民は経済的に追い詰められて困窮し、破綻し、孤立し、自殺も増えている。

 我々人類だけが、このウィルスに苦しめられている。他の生き物の生息に影響を与えているという話をわたしは知らない。なぜウィルスは人類だけを標的にしているのか、不可思議ではあるが納得できないわけでもない。

 というのは、特に近代以降、人類は我がもの顔で地球上にはびこり、自然環境を破壊し続けて他の生き物の生息を蝕み、一部の種を絶滅させるまでに追い詰める大罪を犯してきたからだ。大罪人であれば、天罰が下されて当然である。今回のパンデミックは、ウィルスが他の生き物に代わって人類に天罰を下しているという見方ができなくもない。

 人類が犯してきた自然破壊とは、動植物の生態系に悪影響を与えている大規模な森林破壊であり、重金属や有機溶剤、農薬などの有害物質による土壌汚染や海洋汚染である。更には、石炭や石油、天然ガスを燃やして温室効果ガスを排出することにより頻発する異常豪雨や台風の狂暴化、記録的な熱波や寒波などの気候変動のことである。

 人類が犯し続けてきた環境破壊により、地球はまだら模様の醜い惑星へと変わりつつあるのは容易に想像できる。宇宙から送られてくる地球の映像は、青く美しい神秘的な惑星に見えるが、地球人の一人として心境は複雑であり、後ろめたい気持ちもある。

 地球が待ったなしの危機的状況にあるにもかかわらず、政治指導者や資本家たちは、経済成長至上主義の価値観を変える気がないようだ。その価値観によってもたらされる災いが、ブーメランになっていることに気づかないほど、彼らは鈍感になり下がっている。

 昔から「馬鹿は死ななきゃ直らない」という言葉がある。愚か者はどうにも仕方がないという意味だ。この言葉どおり、人類はあきれるほどの愚か者になっているのかもしれない。たとえそうだとしても、同じ地球という宇宙船に乗っている他の生き物にとっては、甚だ迷惑な話である。

 今後、更に地球温暖化が進んで永久凍土が融け、あるいは自然の奥深くに開発が更に進めば、眠っていたウィルスが次々と登場し、人類に牙を向いてくることになるだろう。

 ウィルスの逆襲は既に始まっている。今回のパンデミックがそうだ。もはや人類は、他の生き物と共生していく道以外に未来はない。