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【街景寸考】パンツと「パンツ」のこと
Date:2022年10月27日19時53分
Category:
エッセイ
SubCategory:
街景寸考
Area:
指定なし
Writer:
大昭寺いさじ
パンツと言えば、腰から股の辺りを覆う下着のことだと昔から相場が決まっていた。女物だって男物と同じようにパンツと言っていた時代があった記憶がある。昭和30年代前半のことである。
その頃、祖母や母は女物の下着のことをズロースと言っていた。大学生の頃になると若い女性を中心に、特に東京だったということもあるかもしれないが、パンティという言い方で広まっていたように思う。
以降、パンティという呼称で世間に定着しているのかと思っていたら、昨今はショーツという呼称が女性の間で広まっていることをカミさんに訊いて知った。その点、男物の下着は一貫してパンツで通してきた。
ところが、いつの頃からかズボンのことも「パンツ」と言うようになった。この呼称がどれくらい定着しているのか知らないが、紛らわしくしているのは事実だ。スラックスという呼称も使われるようになったが、ほどなくして横合いから突如「パンツ」と言う人たちが出てきたような感覚がわたしにはある。
ずっと下着のパンツで馴染んできたのだから、「わざわざズボンのことをパンツという同じ呼称を使って紛らわしくするな!」というのが団塊世代のわたしの意見である。
それではズボンを「パンツ」と言っている人たちは、下着のパンツのことを何と言っているのか聞いてみたい。「ブリーフ」とか「トランクス」という言い方はあるが、これらはパンツの種類なので、浴室の中からカミさんに「おーい、ブリーフ(トランクス)を持ってきてくれ」とは言わないはずだ。
余談になるが、わたしはトランクス派だ。一時期、ブリーフをはいていたことがあるが、長くは続かなかった。局部が蒸れ、蒸れるとタムシができるかもしれないと案じた。何よりも鏡に映った自分の姿がオシメをはいたチンパンジーのように見えたからだ。
一時期、試しに褌(ふんどし)をカミさんに作ってもらったことがあった。風通しがよく健康的であるように思えたからだ。しかし、これも長続きはしなかった。横からタマタマがのぞくときがあったので落ち着きが悪かったのである。
結局はトランクスに落ち着くことになった。褌ほどでもないが風通しは悪くないし、姿恰好はブリーフをはいたときよりはましなように思えた。そう言えば、小学校高学年の頃になると柄物のトランクスをはくようになった。柄物は初めてだったので当時は下着のようには思えず、半ズボンをはいた気分で夜の街を歩き回っていたことがあった。
「パンツ」の話に戻る。このままズボンが「パンツ」という呼称で勢いを増せば、いずれズボンという言葉は死語になり、男物の下着のパンツも死語になるのかもしれない。そのとき下着のパンツはどんな呼称に代わっているのだろうかと思う。
まあ、それはどうでもよいが、ともかく前後の文脈で下着のパンツのことなのかズボンの「パンツ」のことなのか紛らわしい今の事情を早く清算してほしいと思う。