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Date:2023年02月21日17時07分
Category:
エッセイ
SubCategory:
街景寸考
Area:
指定なし
Writer:
大昭寺いさじ
ロシアがウクライナに軍事侵攻してから1年になる。しかも、終息する兆しはまったくない。当初、プーチン大統領は「特別軍事作戦」と称して短期間のうちにウクライナを武力でロシアの勢力圏に引き入れようとしたが、そうはならなかった。ウクライナから想定外の強い抵抗を受け続けたからだ。
プーチン大統領の目論見が外れた背景には、「ロシアに決して屈服しない」というウクライナ大統領ゼレンスキーの強い決意と気概があり、この決意と気概に心を動かされて兵器供与などの軍事支援に合意したアメリカをはじめとするNATО各国の動きがある。
プーチン大統領が短期間で終えるだろうと高をくくったのは、9年前にウクライナの一部だったクリミア半島を3週間で併合したという下地があったからだと推測できる。もっとも、このクロミア併合をウクライナはもちろん、西側諸国も国連も認めてはいない。
同様に、昨年9月にウクライナ東部、南部の4地域で実施された住民投票で「ロシアへの編入」がなされた結果にも、「銃により強制された不正な投票」などの国際法違反があったとして国際社会は認めてはいない。
この1年間で両軍合わせて20万人超が死傷(米軍推定)し、7千人超の民間人が死亡(国連推定)したと発表している。民間人とはウクライナ国民のことだ。戦場がウクライナ国内で行われているので、当然そうなる。発電施設や給水施設、道路などのインフラや、住居、学校、病院などが破壊され、荒廃しているのもウクライナ国土だけである。
どこの国の軍人や国民であろうとも命の重さを区別することはできないが、報道を見聞きしている中では、あまりにも不公平な戦争が行われているように思え、奇異に感じたり義憤を覚えたりしている。ウクライナの方だって、ロシア国内に向けて空爆やミサイル攻撃などを行ってもよいのではないかと、つい思ってしまう。
もちろん、そうなれば戦争が更に拡大していく恐れがあるので実際に踏み込むことができないのは分かっているが、いかにもロシア軍だけが国境を越えて攻撃してもよいという前提条件があるかのような今回の戦争が理不尽に思えて仕方がない。
この奇異な戦争の有様は、軍事支援を続けるNATОのスタンスにも見ることができる。ロシア軍を一方的に撃退できるまでの支援はせず、そうかといってウクライナ軍が敗けることのない程度の支援をしているように思えるのである。こうしたスタンスはロシア軍の核使用を懸念してのことなのだろうが、結果的には戦争を長引かせているだけであり、その分さらに多くの人間が死に続けていくということにもなる。
それにしても、今回もやはり国連の無力さをつくづく再認識させられた。なぜプーチンはここまで世界を脅かし、世界から孤立してまでも悪魔的な行動に突き進むことができるのか理解できない。なぜ世界はたった一人の欲望を止めることができないのか。
「何のための戦争なのか分からない」と言ったのは捕虜になったロシア兵である。この言葉の中に今回の悲劇が表されているように思う。