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【街景寸考】新聞不読から丸2年
Date:2016年08月10日08時01分
Category:
エッセイ
SubCategory:
街景寸考
Area:
指定なし
Writer:
大昭寺いさじ
大学浪人の時代、朝日新聞の配達をしていた縁で、社会人になってからも朝日新聞の購読を続けてきた。この間、他紙からの勧誘員が幾度となく自宅を攻めてきたが、断り続けてきた。いくら洗剤箱を積まれても、プロ野球の観戦チケットを差し出されても、心が揺らぐことはなかった。
朝日新聞の編集方針や記事の内容が特別気に入っているというわけではなかった。他紙を購読してみようと思わなかったのは、単に朝日新聞を読み慣れていたというだけのことだった。他紙に乗り換えたら、その紙面に慣れるのが余計なことのように思えた。もし浪人時代に他紙の販売所で配達をしていたら、やはりその新聞を購読していたように思う。朝日新聞と自分との関係は、その程度のものでしかなかった。
ところが2年前、ジャーナリストの池上彰氏が朝日新聞に執筆していた連載コラムが、同社の勝手な都合で掲載を中止されるという事件があり、この事件に腹を立てた私は、一もニもなく購読を止めることにした。他紙を購読するような気も起こらなかった。40数年も読み続けてきた新聞だったので、不読による禁断症状が必ずどこかで出てくるだろうという、予測をしてのことだった。
ところが不読から2年経ったが、それらしき症状はついに起きることはなかった。購読料が節約できるということでは喜ばしいが、一方で複雑な思いもある。自分自身思っていたほどの活字欲を持っていなかったということを、認めざるを得ないからだ。
新聞を読んでいた頃の自分を、この機会に思い返してみた。まず、裏面にあるテレビ欄から見た。次は社会面を開き、四コマ漫画を見てから、事件や事故の記事を読んだ。次はスポーツ欄のプロ野球の記事だけ目を通した。後は、天声人語を読み、文化欄、読者欄と順に読み、他の欄はせいぜいリードに目を通すことがあっただけである。
自分と新聞とは、この程度の関わり方でしかなかったのだ。この程度なら何も40数年も購読を続けるほどのことではなかった。今後も新聞を購読する気はない。
何かを読んでみたくなったときに、読んでみたい本だけ読んでいれば、それで自分の活字欲を満たすことができる。