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【街景寸考】歌謡界のこと
Date:2017年12月20日08時01分
Category:
エッセイ
SubCategory:
街景寸考
Area:
指定なし
Writer:
大昭寺いさじ
先ずは、歌謡界のことはド素人であることを前置きしておきたい。
40数年前、音楽特番として「思い出のメロディ」(NHK)や「なつかしの歌声」(テレビ東京)が放映されるようになってから、懐かしのメロディ(懐メロ)が、ちょっとしたブームになる時期があった。
当時、そのブームの頃に登場していた歌手は、戦前・戦後を歌ってきた藤山一郎、近江敏郎、ディック・ミネ、並木路子、菅原都々子等の方々であり、更には昭和30年代を中心に歌ってきた春日八郎、若原一郎、青木光一、大津美子等の方々だった。
「だから言ったじゃないの」で親しまれた「お恵ちゃん」こと松山恵子もこの中にいた。この頃、彼女がまだ40代だったということに驚く。他の懐メロ歌手も40代、50代が多かったように思う。
その頃現役だった歌手も、すでに40年以上も経過し、当時の懐メロ歌手よりも齢を取っていることになる。ところが未だにそれらの歌手が、現役歌手として歌い続けている例は少なくない。五木ひろしは69歳。南こうせつ68歳、井上陽水69歳である。まだ若手だと思っていた岩崎宏美も59歳になった。
未だ現役歌手のままでいるのは、衰えない歌唱力を維持しているからだが、加えて、新曲を作って貰える機会があったり、自ら新曲を作ったりすることができるからだろう。かつての懐メロ歌手が今の現役歌手より若かったのに、現役歌手でいられなかったのは、歌謡界の事情や時代の違いだったのかもしれない。それにしても今の歌手のように、60代になっても現役歌手として歌い続けてほしかったと、今さらながらに思う。
昨今、現役歌手の高齢化が進む中、有能な若手歌手の輩出が滞っているように思える。作詞家・作曲家の輩出においても同様のようだ。持ち歌の少ない若手歌手がやたらとカバー曲を歌っているのも、各局で阿久悠の作詞した歌の特番が組まれるのも、BSで美空ひばりの特番が未だに続けられているのも、そのことを物語っているのではないか。
今年も年末恒例の紅白歌合戦が近づいてきた。新しい歌であろうが古い歌であろうが、心に沁みるような歌を聴いてみたい。そんなことを思っていたら、好きだった懐メロ歌手の面々が浮かんできた。
数年前、紅白で80歳の美輪明宏さんが歌った「ヨイトマケの唄」は圧巻だった。若い人たちにもウケたようだ。こうした歌がたくさん聞けるような歌謡界であってほしい。美輪さんの登場を待つだけの紅白は、あまりにも寂しい。