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【街景寸考】早過ぎる診察のこと
Date:2018年12月05日08時01分
Category:
エッセイ
SubCategory:
街景寸考
Area:
指定なし
Writer:
大昭寺いさじ
久々に風邪を引いてしまった。2日目からは喉に痰が頑固に絡みつくようになった。その痰を吐き出すには、痛みを覚悟して喉の奥から力を入れて切り離さなければならなかった。
3日目には鼻汁が頻繁に出るようになり、咳も連続して出るようになった。今年の正月にひどい風邪を引いて寝込んだことのあったカミさんにはうつしたくなかったので、自宅近くにある内科医院へ行くことにした。風邪を引いて医院に行くのは小学生以来のことだ。
わたしはカミさんに用意してもらった2枚のマスクを重ねて着け、内科医院へ向かった。午前11時頃だったせいか、意外にも待合室には2組の外来患者しかいなかった。わたしは5分も待たずに、看護師さんから診察室に入るよう促された。
診察室の扉を開けると、直ぐ奥に女医さんが椅子に座り、次の患者を待ち受ける恰好をしていた。「どうしましたか」。わたしは上着を脱ぎながら「3、4日前から風邪のような症状が出てきました」と言うと、あらかじめ看護師が記入していた問診票に目をやりながら「熱はあまりないようですね。咳はどうですか」と訊いてきた。
問診はたったそれだけだった。丸椅子に座ったばかりのわたしに「口を開けてください」と言ったので、口を開けたらマスクをしていたことに気づき、慌ててはずした。すると、いきな長い鼻汁が垂れ下がったので、わたしは左手に持っていたマスクで素早く鼻汁を拭い、あらためて口を開けたままの顔を女医さんに差し出した。
次に女医さんは金属ヘラでわたしの喉の奥を覗き、何も言わないまま聴診器を手にして胸や背中に集音盤を当ててきた。わたしの身体が強く汗ばんでいたので、集音盤が身体から離れるたびに「チャピ、チャピ」と粘っこい音を発していた。自分でも嫌な音だと思ったが、女医さんはもっと気色の悪い思いをしているに違いないと思った矢先に、聴診器による診察を終わらせ、「風邪薬を出しておきましょう」と告げたのだった。やはり「チャピ、チャピ」のせいだったような気がしていた。
問診から診察が終わるまで1分もかからなかった。その早さには少々驚いたが、診察室を出て行くしかなかった。子どもの頃に診てもらったときは、左手で腹部を押さえながら右手でトントンと軽く叩く診察があり、先端がゴムになった金槌で膝頭を叩く診察もあったのに。それに、覚悟していた注射もしてもらえなかった。
わたしは、粗末に扱われた患者のように思えた。そう扱われたのは、やはり「チャピ、チャピ」のせいだったのか、それともどうせ老い先短い年寄りだからだと思われたからか、あるいは軽度の風邪の場合は誰にでもこの程度の診察をしているのか。
果たして、処方された3種類の薬を飲んだら、その二日後には風邪の症状がおさまりかけていた。女医さんに感謝するしかなかったが、粗末に扱ったと誤解されるような対処には苦言を呈したい気持ちは残ったままである。