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Date:2015年05月13日10時55分
Category:
地域(海外)
SubCategory:
あれこれオーストラリア探訪
Area:
指定なし
Writer:
三陽生人
チャッツウッドのチャイニーズマーケット
中国人が世界中に根を下ろしている事はそれとなく知ってはいたが、シドニーにいるとその実態を随所で実感する。わが町チャッツウッドは特に中国人が多い。一昔前までは日本人が多かったらしいが、今は中国人と韓国人の街と化している。人口が多いだけに中国人が経営する中華レストランや中国人のためのスーパーマーケットも多数存在する。中国人のために日曜礼拝を行う教会や仏教寺院もある。恐るべき中国人パワーである。
そんな中国人に間違えられる事も少なくない。誰が間違えるのかと言えば、中国人である。ブラブラと街を歩いていると、いきなり「ニーハオ」と声をかけられる。こちらが俺にか?と訝しげに見返しているのに、構わず次から次へと畳み掛けるように話してくる。もちろん中国語でだ。そしてひとしきり話した後で、私が日本人だと気づくと、ソーリーの一言もなく、いきなり知らん顔して遠ざかって行く。
これは知人の中国人から聞いた話だが、中国では子供の頃から「謝る」ことを教えないし、させないそうだ。「謝らない文化」がそこにあるという。中国は道徳の国というイメージが私にはある。かの孔子の国であり、日本の精神的支柱とも言える儒学が生まれ育った国だからだ。しかし、その中国で今や孔子の教えなど皆無と言っていい。先日、大学教授の義兄が中国で講演した際に、会場の人達に孔子の教えについて尋ねたところ、だれも知る人がいなかったと嘆いていた。
今、中国政府は海外の大学などの教育機関と提携し、中国語や中国文化の教育及び宣伝、中国との友好関係醸成を目的に「孔子学院」なる公的機関を設立しているという。こう聞くと、世界中に孔子の儒学思想、すなわち人としての道徳教育を行う機関を作っているのかと思いきや、孔子学院とは名ばかりで、全く孔子の教えとは無関係なのだそうだ。アメリカでは昨年、大学教授協会が孔子学院を中国国家の手足として機能しており、学問の自由が無視されていると批判し、各大学に対し関係を絶つよう勧告したそうだ。
文化大革命で孔子の道を唾棄した結果、道徳の頽廃を招いてしまった中国。「謝らない文化」とは、まさに儒学の精神の対局にあると言える。そんな儒学も江戸時代の日本で花を咲かせた。明治維新を成し遂げた志士達が学んだのも孔子の教えに他ならない。大河ドラマの松下村塾などは典型例だ。しかし、日本人の道徳的精神を支えたこの文化も戦後教育の変革の中で次第に失われて行った感が強い。とはいえ日本は中国とは違う。今、日本人は道徳教育の必要性を再認識しようとしている。日本人が世界中の人々から尊敬され続けるためには、武士道に見られるような真の精神的文化を再確認すべき時だと思う。
湯島聖堂の孔子像